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テーマパーク・遊園地の荷物検査が一見緩いのは何故?

東京ディズニーリゾートや、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどの大手テーマパークでは、現在入園時の手荷物検査が行われています。パークによって金属探知ゲートや、X線検査装置を使っていたり、係員の目視検査であったりその方法はいくつかあります。

しかし、実際に検査を受けると「X線検査も通さず、鞄の中をパパっとみてお終い」という場合も多く、「こんなに緩くて良いのか?」と心配している方も結構多いようです。

でも、ご安心ください。緩く見える荷物検査ですが、実はそれだけで必要充分な検査効果を発揮しているようです。今回、その理由について推察してみましょう。

東京ディズニーランドの金属探知ゲート
東京ディズニーランドの金属探知ゲート

検査の主目的は「不審者対策」

 まず誤解が多いのですが、この荷物検査では「食べ物や三脚などの持ち込みをチェックする」ことが主目的ではありません。
 確かにパークによっては外部からの食べ物や、三脚などの持ち込みを禁止しているところもあり(USJなど)、チェックされていますが、これはあくまでも「ついで」です。
 ちなみに東京ディズニーリゾートでは、実は「持ち込み」は禁止されていません(アルコール飲料は持ち込みも禁止)。禁止されているのは「園内での持ち込み物の飲食」や「三脚などの使用」なので、仮に検査で見つかっても「園内では使用しないで(食べないで)くださいね」などと言われるだけで終わります(一応「東京ディズニーリゾートからのお願い」には「持参した食べ物の持ち込み」はNGとあるのですが、一方でよくある質問の「お弁当を持って行くことはできますか?」には「※バッグなどに入れて、パーク内で持ち歩くことは可能です。」と明記されています)。
https://www.tokyodisneyresort.jp/tdr/resort/forguest.html
https://faq.tokyodisneyresort.jp/tdr/faq_detail.html?id=11480&category=335&page=1

 検査の一番の目的は「武器や有害物質など人に危害を与える恐れのあるもの」を持ち込んで園内で犯罪行為を行おうと考えている人(不審者)の入園を阻止するためです。

 この手の荷物検査は、ひとつは「検査しているぞ」という表明により、禁止物を持ちこもうとする人への「牽制」のために行われます。これだけでも結構な心理的抑止効果があります。また、ほとんどの人が「緩く」検査されている場合でも、例えばランダムに「厳しく」検査する人がいるだけで抑止効果は高まります。

 似たような例として、防犯カメラを設置するだけで、犯罪抑止効果があるというデータもあります。
(福岡県警との協力で行われた調査報告
 https://www.police.pref.fukuoka.jp/data/open/cnt/3/1005/1/03amemiya.pdf

対応スピード・コストと防犯効果のバランスが重要

 例えば検査も何もしない場合の阻止率が50%ぐらいだったとして、簡単な検査を実施すると抑止効果で阻止率を95%ぐらいまで上げられるとします。

 それでも「不審者対策するならもっとじっくり検査すべきでは」という意見もあることでしょう。当然、じっくりと検査すればその分、不審者の侵入を阻止する率は高くなります。ただし検査に時間がかかるため、大手のパークでそれを行うと、現状の監査係員数では、入園するまでに検査だけで1〜2時間待ちなどなりますし、スピードアップのために検査係員の人数を増やしたら、その分の人件費が膨大なものになってしまいます。

 しかも、それだけ時間やコストをかけて100%の阻止は不可能でせいぜい99%止まりでしょう。

 たった4%しか阻止率が上げられないのに、それだけの時間やコストをかけるのはかなりの無駄になってしまいます。

 

 お客さんからクレームが来ないギリギリのスピード、それに必要なコスト、そして不審者阻止率のバランスを考えて、現在の「見た目緩い」検査方法を各パークが選択しているという状態です。

 

不審者監視は荷物検査場だけで行われているわけではない

 なお、現場で実際に行われている検査そのものよりも、その検査に並んでいるときに不審な行動をしている人がいないかどうかをカメラなどでチェックしていることもあります。不審な行動を確認された人は、無線で連絡が行き、その人の荷物は厳重にチェックするという形です。

 現在では、カメラ映像から自動的に不審者をあぶり出すシステムも存在し、実際にオリンピックなどでの不審者対策に用いられています。
https://www.elsysj.net/defender-x/

 

 ミニチュアテーマパーク「スモールワールズ東京」では、このシステムで犯罪行為の不審者だけでなく、「体調が悪いのに健康であると嘘をついているような人」を検出していることを公表しています。
NHKニュース:https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20211203c.html

一見、緩く見えるパークの手荷物検査ですが、充分な犯罪抑止効果がありますので、普通の方はどうぞご安心してパークを楽しみましょう。